2011年10月19日水曜日

ザクロ

ザクロ(石榴、柘榴、若榴、学名:Punica granatum)とは、ザクロ科ザクロ属の落葉小高木、また、その果実のこと。原産地については、トルコあるいはイランから北インドのヒマラヤ山地にいたる西南アジアとする説、南ヨーロッパ原産とする説およびカルタゴなど北アフリカ原産とする説などがある。庭木などの観賞用に栽培されるほか、果実は食用としても利用される。
○特徴
葉は対生で楕円形、なめらかでつやがある。初夏に鮮紅色の花をつける。花は子房下位で、蕚(がく)と花弁は6枚、雄蕊は多数ある。果実は花托の発達したもので、球状を呈し、秋に熟すと赤く硬い外皮が不規則に裂け、赤く透明な多汁性の果肉(仮種皮)の粒が無数に現れる。果肉一粒ずつの中心に種子が存在する。ザクロには多くの品種、変種があり一般的な赤身ザクロのほかに白い水晶ザクロや果肉が黒いザクロなどがあり、アメリカではワンダフル、ルビーレッドなど、中国では水晶石榴、剛石榴、大紅石榴などの品種が多く栽培されている。 日本に輸入され店頭にしばしば並ぶのはイラン産、カリフォルニア州産が多く、輸入品は日本産の果実より大きい。
○分類
ザクロ科はザクロ属のみからなる。また、ザクロ科の植物は、ザクロとイエメン領ソコトラ島産のソコトラザクロ(P. protopunica)の2種のみである。近年発達した分子系統学によるAPG植物分類体系ではミソハギ科(Lythraceae)に分類される。
○栽培
世界各地で栽培されており、日本における植栽範囲は東北地方南部から沖縄までである。日当たりが良い場所を好む。若木は、果実がつくまでに10年程度要する場合もある。病虫害には強いがカイガラムシがつくとスス病を併発する場合がある。
○歴史
・伝播
新王国時代にエジプトに伝わり、ギリシア時代にはヨーロッパに広く伝わったとされる。東方への伝来は、前漢の武帝の命を受けた張騫が西域から帰国した際に、パルティアからザクロ(安石榴あるいは塗林)を持ち帰ったとする記述が『証類本草』(1091年-1093年)以降の書物に見られるため、紀元前2世紀の伝来であるとの説があるが、今日では3世紀頃の伝来であると考えられている。日本には923年(延長元年)に中国から渡来した(9世紀の伝来説、朝鮮半島経由の伝来説もある)。
・語源
科名のPunicaceae、属名のPunica は「フェニキアの」を意味する Poeni に由来する。これは古代ローマの博物学者プリニウスが『博物誌』を著した当時、ザクロは「カルタゴのマルス」(m?lus p?nica)としてカルタゴ周辺が原産地と考えていたためである。種小名のgranatum は「種の」や「粒の」を意味し、英名の pomegranate(粒の多いリンゴ)は中世ラテン語の p?mum gr?n?tum, p?ma gr?n?ta(種の多いリンゴ)に由来する。中国語名の「石榴」および「安石榴」は、パルティアの王朝アルサケス(アルシャク:Arshak )を張騫が「安石」や「安息」と音訳したものであり、パルティアを意味する「安息国」に由来する。また、塗林と呼称した時代もあるが、これはサンスクリットでザクロを意味する darim 、darima の音訳である。「榴」は実が瘤に似ていることに由来するという。日本語のザクロは、石榴、柘榴の字音からと考えられており、呉音では「ジャク・ル」、漢音では「セキ・リュウ」となる。『本草和名』では「安石榴、別名 塗林・若榴、和名 佐久呂」とされている。また、古代イランと中国の文化交流を研究したラウファー(en) は若榴の中国語読みの「zak-lau 」に由来するとの説を唱えている。また、有力な原産地のひとつと考えられるティグリス川およびペルシア湾の東方にそれに平行してザグロス山脈がある。ザクロの呼称は、ザクロス山脈を現地音に近い「石榴」の字で音訳したともいわれている。
○利用
・食用
可食部は皮と種子を除いた果実で生食される。果汁をジュース(en)としたり清涼飲料水のグレナディンの原料とする(これ以外にも地域によって色々あるらしい)。
・観賞用
日本では庭木、盆栽など観賞用に栽培されることが多く、矮性のヒメザクロ(鉢植えにできる)や八重咲きなど多くの栽培品種がある。江戸時代の園芸書である『花壇地錦抄』などに記載の見られる古典園芸植物のひとつでもある。
・木材
木質は硬く、床柱や装飾用の柱に用いられる。
・薬用
古くから以下のような部位が薬用に供されてきた。なお、以下の利用方法・治療方法は特記しない場合、過去の歴史的な治療法であり、科学的に効果が証明されたものであることを示すものではない。
(樹皮・根皮)
乾燥させた樹皮または根皮は、生薬名として「石榴皮」(ザクロヒまたはセキリュウヒ:Granati Cortex )または「石榴根皮」といい、古くから条虫(特に有鉤条虫)の駆虫薬として用いられてきた。ディオスコリデスの『薬物誌』でも樹皮が駆虫薬として用いられている記述が見られる。近代になり、1884年Schroder によって駆虫薬としての有効性が科学的に証明され、過去にはイギリスやアメリカの薬局方にも収載されていた。日本薬局方には初版より「石榴根皮」として収載され(後にザクロヒ)、第7改正まで収載されていた。石榴皮の主な成分は、0.3 - 1 % 程度の揮発性アルカロイド(ペレチエリン (pelletierine)、イソペレチエリン (isopelletierine)、プソイドペレチエリン (pseudopelletierine) など)と 23 - 28 % 程度のタンニン(プニカラギン (punicalagin) など)である。通常、駆虫には乾燥させた樹皮または根皮 30 - 60g を 300 mL の水に 5 - 6 時間に浸したものあるいは煎じたものを服用する。多量に服用すると中毒を起こす場合がある。また、『和漢三才図会』では下痢、下血、脱肛、崩漏、帯下を止めるのに用いるとの記述がある。更に、口内炎や扁桃炎のうがい薬にも用いられたという。漢方薬としては、石榴根皮、苦楝皮(クレンピ)、檳榔子からなる「石榴根湯」があり、駆虫に用いられる。
(果皮)
果皮を乾燥させたもの(石榴果皮)も樹皮や根皮と同様の目的で用いられることが多く、中国やヨーロッパでは駆虫薬として用いた。ただし、根皮に比べ揮発性アルカロイドの含有量は低く効果も劣る。また、回虫の駆除に用いられたこともあったようであるが、犬回虫を用いた実験では強い活性はみられなかった。日本や中国では、下痢、下血に対して果皮の煎剤を内服し、口内炎や扁桃炎のうがい薬にも用いられた。プリニウスは、果皮を利尿に用いるとしている。
(花)
粉末にした花(石榴花)は、出血性の傷に用いられた。
(種子)
1964年Sharaf らが種子油(酸石榴)にエストロゲン活性があることをマウスを用いた実験で見出し、1966年Hefumann らによってこの活性がエストロンによることが示され、乾燥種子100g 中に1mg のエストロンが含まれることが1988年Moneam らによって確認され、更年期障害や乳癌などに対する効果が期待された。ただし、エストロンの含有量が微量であること、経口摂取ではエストロンは肝臓で速やかに代謝されること、また、エストロンの生理活性はエストラジオールの10 分の1 程度であることなどから実質的な効果は疑問視されている。
(果汁)
果汁にエストロゲンが含まれるとして1999年から2000年頃にブームとなったが、流通しているザクロジュースやエキス錠剤等10 銘柄を用いた国民生活センターの分析では、いずれもエストロゲンは検出されなかった。





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