2012年2月4日土曜日

クスノキ

クスノキ(樟、楠、Cinnamomum camphora)とは、クスノキ科ニッケイ属の常緑高木である。一般的にクスノキに使われる「楠」という字は本来は中国のタブノキを指す字である。別名クス、ナンジャモンジャ(ただし、「ナンジャモンジャ」はヒトツバタゴなど他の植物を指して用いられている場合もある)。食用となるアボカドや、葉が線香の原料となるタブノキは近縁の種である。
○特徴
幹周囲10m以上の巨樹になる個体も珍しくない。単木ではこんもりとした樹形をなす。木肌は綿密で、耐湿・耐久性に優れている。葉はつやがあり、革質で、先の尖った楕円形で長さ5~10cm。主脈の根本近くから左右に一対のやや太い側脈が出る三行脈である。その三行脈の分岐点には一対の小さな膨らみがあり、これをダニ室という(後述)。4月末から5月上旬にかけて大量に落葉する。5月から6月にかけて、白く淡い黄緑色の小さな花が咲く。10月から11月にかけて、直径7~8mm程度の青緑色で球形の果実が紫黒色に熟す。鳥が食べて種子散布に与るが、人間の食用には適さない。中には直径5~6mm程度の種子が一つ入っている。各部全体から樟脳の香りがする。樟脳とはすなわちクスノキの枝葉を蒸留して得られる無色透明の固体のことで、防虫剤や医薬品等に使用される。カンフル注射のカンフルはこの樟脳を指しており、“camphora”という種名にもなっている。
○生育地
世界的には、台湾、中国、ベトナムといった暖地に生息し、それらの地域から日本に進出した。(史前帰化植物)日本では、主に、本州西部の太平洋側、四国、九州に広く見られるが、特に九州に多く、生息域は内陸部にまで広がっている。生息割合は、東海・東南海地方、四国、九州の順に8%、12%、80%である。人の手の入らない森林では見かけることが少なく、人里近くに多い。とくに神社林ではしばしば大木が見られ、ご神木として人々の信仰の対象とされるものもある。
○利用
全体に特異な芳香を持つことから、「臭し(くすし)」が「クス」の語源となった。「薬(樟脳)の木」が語源とする説もある。またそのことや防虫効果から元来虫除け(魔除け:アジア圏では古来から虫(蟲)は寄生虫や病原菌などの病魔を媒介すると考えられていた)に使われたくす玉(楠玉)の語源であるという説もある。材や根を水蒸気蒸留し樟脳を得る。そのため古くからクスノキ葉や煙は防虫剤、鎮痛剤として用いられ、作業の際にクスノキを携帯していたという記録もある。また、防虫効果があり、巨材が得られるという長所から家具や飛鳥時代の仏像にも使われていた。枝分かれが多く直線の材料が得難いという欠点はあるが、虫害や腐敗に強いため、古来から船の材料として重宝されていた。古代の西日本では丸木舟の材料として、また、大阪湾沿岸からは、クスノキの大木を数本分連結し、舷側板を取り付けた古墳時代の舟が何艘も出土している。その様は、古事記の「仁徳記」に登場するクスノキ製の快速船「枯野」の逸話からもうかがうことができる。室町から江戸時代にかけて、軍船の材料にもなった。クスノキの葉は厚みがあり、葉をつける密度が非常に高いため、近年交通騒音低減のために街路樹として活用されることも多い。
○ダニ室について
クスノキの葉に2つずつ存在するダニ室にはクスノキにとって無害なフシダニの一種が生息している。ダニ室で増殖したフシダニは少しずつダニ室の外に溢れ、これをダニ室には侵入できないサイズの捕食性のダニが捕食することでクスノキの樹上には常にフシダニ捕食性のダニが一定密度で維持されている。このダニ室を人為的に塞いでダニ室のフシダニやこれを捕食する捕食性のダニを排除すると、クスノキにとって有害な虫えいを形成するフシダニが増殖し、多くの葉がこぶだらけになることが知られている。従って、クスノキの葉のダニ室はクスノキに病変を引き起こすフシダニの天敵の維持に役立っていると考えられている。


コバノシナノキ

コバノシナノキ(小葉の科の木、小葉の級の木、学名:Tilia cordata Mill.)とはシナノキ科の植物の一種。フユボダイジュ(冬菩提樹)、コバボダイジュ(小葉菩提樹)、シナボダイジュ、ヨーロッパボダイジュなどの別名がある。
○分布
中国原産の落葉高木。ヨーロッパからコーカサスに分布。ナツボダイジュ同様に日本各地の仏教寺院に多く植えられている。
○特徴
高さ30mに達する高木。葉はナツボダイジュのような有毛は少なくざらつきはない。 葉は長さ5cm程度と小さく、葉や花はハーブとして用いられるほか、タバコや茶の代用品としても利用されている。
○品種
ゴールドハート (西洋種)
リンデンバウム (西洋種、別名:スモールリーブリンデン)
ライムトリー (西洋種、別名:スモールリーブライム)


2012年2月2日木曜日

ケヤキ

ケヤキ(欅、学名:Zelkova serrata)は、ニレ科ケヤキ属の落葉高木。ツキ(槻)ともいう。
○特徴
東アジアの一部と日本に分布。日本では本州、四国、九州に分布し、暖地では丘陵部から山地、寒冷地では平地まで自生する。街路樹や庭木などとしてよく植えられる。高さ20 - 25mの大木になるため、巨木が国や地方自治体の天然記念物になっていることがある。葉の鋸歯は曲線的に葉先に向かう特徴的な形であり、鋸歯の先端は尖る。雌雄同株で雌雄異花である。花は4 - 5月頃、葉が出る前に開花する。秋の紅葉が美しい樹木でもある。個体によって色が異なり、赤や黄色に紅葉する。
○木材
木目が美しく、磨くと著しい光沢を生じる。堅くて摩耗に強いので、家具・建具等の指物に使われる。日本家屋の建築用材としても古くから多用され、神社仏閣などにも用いられた。現在は高価となり、なかなか庶民の住宅には使えなくなっている。伐採してから、乾燥し枯れるまでの間、右に左にと、大きく反っていくので、何年も寝かせないと使えない。特に大黒柱に大木を使った場合、家を動かすほど反る事があるので大工泣かせの木材である。また、中心部の赤身と言われる部分が主に使われ、周囲の白太は捨てられるので、よほど太い原木でないと立派な柱は取れない。




○シンボル
多くの自治体が、「県の木」「市の木」といったシンボルにケヤキを指定している。

2012年2月1日水曜日

ヤツデ

○特徴
20cm以上もある大きな葉をつける。葉はつやがあり、やや厚手。形は文字通り掌状だが、7つまたは9つ(奇数)に裂けており、8つに裂けることは無い。学名のFatsia は日本語の「八」(古い発音で「ふぁち」、「ふぁつ」)または「八手(はっしゅ)」に由来するという。関東以西の、おもに海岸近くの森林周辺に自生する。日当たりの悪い森林のなかにもよく自生しているのが見られる。葉が大型で独特の形をしているのでよく目立ち、見分けやすい。丈夫なので庭木としてもよく植えられる。 花は晩秋に咲き、球状の散形花序がさらに集まって大きな円錐花序をつくる。花びらは小さいが花茎を含めて黄白色でよく目立つ。他の花が少ない時期に咲くため、気温が高い日はミツバチやハナアブ、ハエなどが多く訪れる。果実は翌春に黒く熟す。葉を乾燥させたものは八角金盤と呼ばれる生薬になり、去痰などの薬として用いられる。しかし葉などにはヤツデサポニンという物質が含まれ、過剰摂取すると下痢や嘔吐、溶血を起こす。このため昔は蛆用の殺虫剤として用いていたこともある。
○近縁種
近縁種としては小笠原諸島にムニンヤツデ F. oligocarpella(米国ハワイ州にも野生化)、台湾にタイワンヤツデ F. polycarpa がある。また、セイヨウキヅタとの属間雑種ファツヘデラ X Fatshedera lizei も観葉植物として栽培される。なお、外見的に似ているが縁の遠いものにカミヤツデ、よく似た葉をつける草本にクサヤツデなど、ヤツデの名を持つものは他にも多い。





2012年1月24日火曜日

ハナショウブ

○解説
ハナショウブはノハナショウブ(学名I. ensata var. spontanea)の園芸種である。6月ごろに花を咲かせる。花の色は、白、ピンク、紫、青、黄など多数あり、絞りや覆輪などとの組み合わせを含めると5,000種類あるといわれている。大別すると、江戸系、伊勢系、肥後系の3系統に分類でき、古典園芸植物でもあるが、昨今の改良で系統色が薄まっている。他にも原種の特徴を強く残す山形県長井市で伝えられてきた長井古種や、海外、特にアメリカでも育種が進んでいる外国系がある。近年の考察では、おそらく東北地方でノハナショウブの色変わり種が選抜され、戦国時代か江戸時代はじめまでに栽培品種化したものとされている。これが江戸に持ち込まれ、後の三系統につながった。長井古種は、江戸に持ち込まれる以前の原形を留めたものと考えられている。一般的にショウブというと、ハナショウブを指すことが多い。しかし、菖蒲湯に使われるショウブは、ショウブ科またはサトイモ科に分類される別種の植物である。
○伝統品種群の系統
江戸系:江戸ではハナショウブの栽培が盛んで、江戸中期頃に初のハナショウブ園が葛飾掘切に開かれ、浮世絵にも描かれた名所となった。ここで特筆されるのは、旗本松平定朝(菖翁)である。60年間にわたり300近い品種を作出し名著「花菖培養録」を残し、ハナショウブ栽培の歴史は菖翁以前と以後で区切られる。こうして江戸で完成された品種群が日本の栽培品種の基礎となった。
肥後系:肥後熊本藩主細川斉護が、藩士を菖翁のところに弟子入りさせ、門外不出を条件に譲り受けたもので、「肥後六花」の一つである。満月会によって現在まで栽培・改良が続けられている。菖翁との約束であった門外不出という会則を厳守してきたが、大正時代にこれを売りに出した会員がおり、瞬く間に中心的な存在となった。
伊勢系:伊勢松阪の紀州藩士吉井定五郎により独自に品種改良されたという品種群で、「伊勢三品」の一つである。昭和27年(1952年)に「イセショウブ」の名称で三重県指定天然記念物となり、全国に知られるようになった。
長井古種:山形県長井市で栽培されてきた品種群である。同市のあやめ公園は明治43年(1910年)に開園し、市民の憩いの場であった。昭和37年(1962年)、来訪した中央の園芸家によって三系統いずれにも属さない品種群が確認され、長井古種と命名されたことから知られるようになった。江戸後期からの品種改良の影響を受けていない、少なくとも江戸中期以前の原種に近いものと評価されている。長井古種に属する品種のうち13品種は長井市指定天然記念物である。







アヤメ

○解説
アヤメは山野の草地に生える(特に湿地を好むことはない)。葉は直立し高さ40~60cm程度。5月ごろに径8cmほどの紫色の花を1-3個付ける。外花被片(前面に垂れ下がった花びら)には網目模様があるのが特徴で、本種の和名のもとになる。花茎は分岐しない。北海道から九州まで分布する。古くは「あやめ」の名はサトイモ科のショウブを指した語で、現在のアヤメは「はなあやめ」と呼ばれた。
○毒性
毒成分 イリジェニン、イリジン、テクトリジン
毒部位 全草、根茎、樹液
毒症状 皮膚炎、嘔吐、下痢、胃腸炎
○アヤメ、カキツバタ、ハナショウブの見分け方
アヤメ、カキツバタ、ハナショウブの同定は慣れれば一目瞭然であるが、見分けのつかない向きも多い。堀切菖蒲園には、その見分け方として次の記述の掲示がある(2005年6月現在)。
・アヤメ
花の色:紫、まれに白
葉:主脈不明瞭
花の特徴:網目模様、外側の花びらに黄色い模様がある
適地:かわいた所に育つ
開花期:5月上旬~中旬
・カキツバタ
花の色:青紫のほか紫、白、紋など
葉:主脈細小
花の特徴:網目なし
適地:水中や湿った所に育つ
開花期:5月中旬~下旬
・ハナショウブ
花の色:紫、紫、絞、覆輪など
葉:主脈太い
花の特徴:網目なし、花の色はいろいろある
適地:湿ったところに育つ
開花期:6月上旬~下旬
・外花被片の模様での見分け方
アヤメ:外花被片に網目模様が有る
カキツバタ:外花被片に網目模様無し、外花被片に白い斑紋が有る
ハナショウブ:外花被片に網目模様無し、外花被片に黄色い斑紋が有る



カキツバタ

カキツバタ(燕子花、杜若、Iris laevigata)はアヤメ科アヤメ属の植物である。
○解説
カキツバタは湿地に群生し、5月から6月にかけて紫色の花を付ける。内花被片が細く直立し,外花被片(前面に垂れ下がった花びら)の中央部に白ないし淡黄色の斑紋があることなどを特徴とする。
江戸時代の前半にはすでに多くの品種が成立しており、古典園芸植物の一つでもあるが、江戸時代後半にはハナショウブが非常に発展して、カキツバタはあまり注目されなかった。現代では再び品種改良が進められている。漢字表記の一つ「杜若」は、本来はヤブミョウガという別種の漢名(「とじゃく」と読む)であったが、カキツバタと混同されたものである。